寒い冬の朝でしたが、令和7年1月19日、韮崎市民センターニコリに多くの先生方が集まり、明治国際医療大学の田口玲奈先生をお迎えして、「女性疾患に対する科学的な鍼灸療法」をテーマとした充実した学術講習会が開催されました。
講演は、私たち鍼灸師にとって大変心強い内容でした。特に印象的だったのは、月経困難症に対する鍼治療の有効性について示された確かな研究結果です。2018年のコクランレビューでは、鍼治療が月経痛に対して高いエビデンスレベルで有効であることが示されており、さらにNSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)との比較でも、同等以上の効果が認められているとのことでした。
なんと74%もの女性が月経困難症で悩んでおり、その社会経済的損失は年間4911億円にも上るそうです。特に機能性月経困難症に対しては鍼治療が素晴らしい効果を示し、3ヶ月程度の継続治療で最大の効果が得られることを、臨床例を交えながら分かりやすく解説していただきました。
また、先生が長年の臨床経験から確立された独自の治療プロトコル「田口式」のご紹介もあり、参加者一同、熱心にメモを取っていました。この治療法は、エビデンスに基づきながらも実践的で再現性の高い手法として、大変参考になる内容でした。
不妊症についても興味深いお話がありました。WHOの2023年の調査では、世界の約17%(6人に1人)が不妊を経験しているとのこと。日本では不妊患者さんの82%が何らかの補完代替医療を利用されており、鍼灸治療は漢方薬と並んで多くの方々から期待されているそうです。
鍼灸治療のメカニズムについても、子宮血流の増加やプロスタグランジン値の低下、β-エンドルフィンの放出促進など、最新の研究データを示しながら詳しく説明していただきました。また、不妊治療中の患者さんの心理的なケアにも鍼灸が役立つことが、コルチゾール値の低下というデータとともに示されました。
今回の講習会で学んだ内容は、明日からの臨床にすぐに活かせる実践的なものばかり。特に月経困難症に対する鍼治療の高いエビデンスと、「田口式」の具体的な治療手順は、私たち鍼灸師の自信にもつながる心強い内容でした。参加された先生方も、明日からの診療に向けて新たな意欲が湧いたのではないでしょうか。